今回は、令和6年(2024年)から新しく実施される公共工事設計労務単価の引き上げと、働き方改革について掘り下げていきます。

 

公共工事設計労務単価とは何か?

公共工事設計労務単価とは、公共工事の工事費の見積もりに使われている単価で、工事現場で働く人に支払われる賃金の基準となる値です。
内訳は以下の図の通りです。

都道府県別、職種別に定められた単価の値は、国土交通省のホームページで確認できます。
【参考】国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001724088.pdf

これは毎年見直しが行われます。
価格の変動としては、平成25年(2013年)以降、12年連続で毎年上昇しています。

 

今回の変更では何がどう変わるのか?

令和6年(2024年) 3月から適用される公共工事設計労務単価が、同年2月16日、国土交通省から発表されました。
全職種において、引き上げがあったことが、以下の図表から見受けられます。
つまり、労働者一人に対して事業者が支払うべき金額が上がります。

全職種での単価の平均は23,600円となり、前年比で5.9%増加します。
これは、建設業界で時間外労働の規制が強化されるのに伴って、人手不足や待遇改善が課題となることを見越しての措置です。

ちなみに、昨年も前年比5.2%と大きく引き上がりましたが、今回はさらに上昇しています。

 

 

国土交通省の発表内容ポイント

今回国土交通省から発表された内容のポイントは以下の通りです。

  • 全国全職種の単純平均は、前年度比で5.9%引き上げ
  • これにより平成25年の改定から12年連続引き上げに
    →平成25年には、必要な法定福利費(※) 相当額を加算するなどの措置が行われ、大きな変化があった
    ※法定福利費とは、従業員を雇っている事業者に負担が義務付けられている保険料などのこと。
  • 労務単価には 事業主が負担すべき人件費(必要経費)は含まれていない。
    “労務単価が23,600円(100%)の場合には、
    事業主が労働者一人の雇用に必要な経費は、33,276円(141%)
    ※以下の図 参照

今年2024年から罰則付きの時間外労働規制が適用される

他にも今年度の変化として特筆すべきは、2019年4月に施行された「働き方改革関連法」の5年間の猶予措置が終了することです。これにより2024年4月からは、時間外労働の上限を超え、違法な労働させている企業には、懲役刑や罰金刑が科せられます。罰則は、6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰⾦、と定められています。

これにより起こる変化は以下の通りです。

 

  • 労働基準法に定められている労働時間の上限は1日8時間、1週間40時間。
    36協定(※)を締結していれば、それに追加して時間外労働が、1週間15時間、1ヶ月45時間、1年360時間 可能。

    ただし納期が迫っており、この上限さえ遵守できない場合には条項付き36協定を締結することにより、さらに労働時間の上限を引き上げることができます。
    ※36協定とは:労働基準監督署が管轄する、時間外・休日労働に関する協定。企業が従業員に時間外労働・休日労働させる場合に届け出るもの。
    →プロジェクトの初期に設定する工期についても、労働時間規制を考慮し慎重に設定しなければならなくなる
  • 残業等時間外労働の単価上昇が義務化 (時間外労働時間の上限規制による)
    「月60時間以上の時間外労働について、割増率50%以上の割増賃金を支払う」義務がある
    →予算設定も今まで以上に慎重になるべき


おわりに

今回の変化により事業者としては、価格、工期ともに設定が難しくなったと見ることができますが、建設業界全体としての問題点、特に労働者目線では「休みがとりにくい」「労働に対する賃金が低い」等を解決するきっかけになることが期待されます。
弊社も法規制をしっかりと理解した上で、日々の業務に取り組んで参ります。

 

【参考】
 国土交通省ホームページ
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001724088.pdf

NHK ニュース「公共工事の賃金基準“労務単価” 平均5.9%引き上げへ 国交省」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240216/k10014360761000.html